「無理してでも現金で支払ったほうが得になるんだろうか…!?」
「住宅ローンを組んだほうが得になることってあるの?」
住宅の購入は一生のうちに何度もない大きな買い物の一つです。多くの方は収入に応じた住宅ローンを組み、毎月返済しながら、住宅を取得していきます。そして完済したときに初めて自分のものとなります。毎月の返済額は賃貸の相場よりも安くなることがあり、また現在は金利もかなり低い状況となっていますので、それほど大きな負担にはなりません。そのため、住宅ローンにそれほど抵抗なく利用する方が多くなっています。
しかしその反面で、住宅を購入する際にローンの金利が無駄になるからと考えて、手持ちの現金で一括で購入したいという方も一定数いらっしゃいます。確かに金利負担のことを考えると、一括で購入できる現金があるのであれば、無理してでも返済したほうがお得になるようなイメージはあります。
しかし本当に現金一括購入のほうがお得なのでしょうか。住宅ローンを組んだ場合には、実はさまざまなメリットがあるために、現金一括購入よりもお得になることも多いのです。しかも現金を持っていても、住宅ローンを組むほうがお得なケースもあります。ここでは、現金一括購入と住宅ローンを比較して、どちらがお得になるのか考えてみたいと思います。
現金一括購入できる資金を持っているとしても住宅ローンを組むほうがお得になるというケースを3つのポイントにまとめてみました。現金一括購入した場合には、住宅ローン金利をはじめ、ローン保証料や事務手数料などの大きな経費が不要となりますのでメリットもそれなりにあります。ただ、同時に受けられなくなるものがあったり、心理的に不安に感じたるようなことも起きてしまうのです。では順番に詳しくお伝えしていきましょう。
団体信用生命保険とは「団信」と呼ばれることもあり、住宅ローン返済中にもし万が一のことがあったとしても、保険金によって住宅ローンの返済ができるといった保障のことを言います。
住宅ローンでは多くの場合、長い期間にわたって毎月返済を続けることになります。そのため利用する場合には、不測の事態が起きた場合のために保険が用意されているのです。
例えば、病気によって働けなくなることがあるかもしれません。万一、そのようなことが起きれば、たちまち支払いが滞ってしまうでしょう。
適用となる保障対象は主に以下のものがあります。
死亡、高度障害保障、三大疾病保障、七大疾病保障など。
※取り扱う保険会社によって若干内容が異なります。
そのようなリスクを考えて加入しておくのが団体信用生命保険です。仮に世帯主に何かがあったとしても、残された家族が安心してマイホームに済み続けることができるのです。
住宅の取得には、さまざまな優遇措置が用意されているため、節税効果によってお得に住宅を取得することができます。
住宅ローン控除とよばれているもので、サラリーマンの方であれば年末調整によって所得税控除を受けることができます。まず所得税から差し引きますが、控除しきれない場合は住民税からも差し引かれます。
年度末のローン残高、もしくは住宅取得価格の低い方の1%が控除されることになります。
例えば、扶養家族の配偶者が1人、小さな子供が2人いる年収500万円のご家庭で、3000万円の物件に対して金利1.2%で住宅ローンを組んだ場合、10年間の減税額は総額で280万円になります。
しかも現在では減税期間は13年に拡充中で、延長も検討されています。これはかなり大きな額になることがお分かりになるでしょう。
しかも、その他にも「固定資産税の軽減措置」「すまい給付金」「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」を受けることができます。
新築住宅なら「固定資産税の軽減措置」によって3年間の固定資産税額が1/2に減額されますし、「すまい給付金」を受ければ最大50万円の給付額が支給されます。※各種要件あり
また住宅取得やリフォーム資金のために贈与を受けるのであれば、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」によって最大3000万円まで非課税となるのです。
これらの優遇措置はうまく活用すればかなりお得になるのです。
ある程度の金額を頭金として活用し、住宅ローンを無理なく支払いを行います。その中で資金に余裕ができたタイミングでその都度繰り上げ返済してゆけば、ローン金利の負担も少なく支払いを続けることができます。
住宅ローンの支払いについては収入に応じた金額に設定しておけば、毎月の支払いは問題ありませんので心理的にもゆとりができるのではないでしょうか。
住宅ローン減税の期間が終了したあとに計画的に繰り上げ返済すれば、金利負担も少なく返済することが可能です。
まとまった額を繰り上げ返済することによって、返済期間を短くするか? 返済額を少なくするか? を選択することができますのでさらに余裕が生まれます。
急な出費が必要となった場合には、月々の返済だけで問題ありません。特に今後、お子さまの進学など控えているようなご家庭であれば、心理的な負担を感じることなく安心して生活を営むことはとても大切です。
現金一括で住宅を購入する場合は、かなり余裕を持って購入するのであれば、金利負担がなく住宅を手に入れることができますからメリットはあるでしょう。ただし、無理して一括購入するのであれば、かなり注意が必要です。
ここでは、住宅ローンを組まずに現金一括で住宅を購入する際の注意点として、3つのポイントにまとめてみました。
住宅ローンを利用する場合には、損害があった場合のリスクを考えて、火災保険などの加入は必須となっています。住宅を現金一括購入する場合には、当然ながら火災保険や地震保険、家財保険などを自身で加入しなければなりません。
近年を振り返ってみても、地震や台風などの自然災害は各地で大きな被害を受けており、安全だと考える地域においても、いつ何時何があるか分からない状況にもあると言えます。
以前では考えられなかったような災害が起こっていることをみれば、やはり自然災害から自宅を守ることの重要性は高いことは間違いないことでしょう。
仮に自身の住宅に影響を受けなかったとしても、近隣に災害が生じることによって、被害を被ることも考えられます。
そのように考えれば、しっかりと保障のある保険を考えておかねばなりませんが、どうしても負担が大きくなってしまうことになります。
住宅ローンを受けた場合には、負担を軽減させるための制度が充実しており節税効果が高いですが、一括購入した場合には受けることができません、先ほど上記でもご説明した通り、小さな子供が2人いる年収500万円の4人家族の場合であれば、金利負担1.2%で住宅ローンを組んだ場合、減税額は総額で280万円になります。
せっかく受けられる減税が受けられなくなってしまうのです。
しかも住宅ローン控除だけではなく、「固定資産税の軽減措置」「すまい給付金」などを活用することもできなくなってしまいます。
現金一括で不動産を購入する場合、かなり大きい買い物になることになりますから、その後の資金がショートしてしまったり、余裕がなくなってしまうことも考えられます。
住宅を購入したいという方の年齢層をみると、30代から40代の方が多く、お子さまの教育資金もこれから必要となる年代であると言えます。
そのような時期に、金利負担を少なくしようと無理に住宅を一括で購入すれば、資金に余裕がなくなるだけではなく、心理的にも負担となってしまいます。
住宅ローンには当然ながら金利負担がありますが、一般的なローンとは違い、金利は0.5%~1%前後程度と、とても低いものになっています。
もし、手元に資金が少なくなり、お金を借りるようなことがあるとするなら、このような低金利で借りることはまず不可能でしょう。
そのようなことを考えてみても、住宅ローンを借りることによって、余裕資金を確保したうえでうまく返済していけばいいのではないでしょうか。
冒頭から、住宅ローンで購入するメリットについてご説明しましたが、無理して現金一括で購入するのではなく、多少余裕があるとしても住宅ローンを組むほうがメリットは大きいと言えます。
一括購入できるほどの資金があるならば、頭金を3割程度入れて金利負担を少なくし、住宅ローン減税をしっかり受けて、減税効果が終わる頃から繰り上げ返済する方法がいいでしょう。
特に現在は金融緩和政策によって0.5%~15.%程度の超低金利となっています。また住宅ローン減税など、公的な制度が受けられますので、ほとんど負担なく住宅が購入できます。
無理に手元の金額を減らすくらいなら、手元に資金を残して投資信託など効率のよい投資で資産運用したほうが、結果的に多くの資産を残すことができるのです。
そのように総合的に考えると、現金一括購入は何もうま味はありません。
次の基準のうちいずれかひとつ以上を満たす住宅であること。
住宅を購入するのであれば、現金一括購入よりも住宅ローンのほうがお得になるポイントをまとめると上記の通りです。
特に現在は、新型コロナウイルスの影響などもあり、社会が不安定になっていますので、手元に現金を残しておく価値は大きいと言えます。
金利負担がもったいないと考える方は多いですが、頭金と減税、繰り上げ返済をうまく活用すれば、かなりお得に住宅ローンを利用することができます。
超低金利なので、手元の資産で積極的に運用し、さらに資産を増やすようにすればいいのです。住宅ローンをうまく活用して、複雑な社会を穏やかに乗り切れるようにしましょう。
※尚、本稿の内容は2021年1月時点のものとなります。予めご了承下さい。